第1回 特別講演「病態スクリーニング検査としての血清蛋白分画の意義」(12)



12.血清蛋白分画と病態

 しかし先程申したように、血清蛋白分画の検査データがそのものが、直接に病態と一致するという訳ではありません。その病態の背景とはもう少し違った内容になりますが、かなり血清蛋白分画で得られたデータに近いという事が判ります。


 例えば、口から蛋白質を食べて、体内のアミノ酸プールに入ると、その中からそれぞれ固有の蛋白質が合成されます。その場合、大凡γ分画を占める免疫グロブリンは免疫グロブリン産生細胞、形質細胞を主とした細胞群が合成されます。又それ以外の大部分は、肝細胞で合成されます。その両者から作られた蛋白質成分が血中にプールされて、循環しているものを我々は調べています。その循環している蛋白質成分について、血漿蛋白或いは血清蛋白を検査した瞬間の値というのは、その背景に栄養、合成、漏出、異化それと血管外の分布の移動、この五つの要素が絡まって、それぞれ検査時の血清蛋白質濃度というのが決まっている訳です。

 ある特定の蛋白質について、或いは蛋白分画について考える場合に、この五つのファクターを頭に入れて病態を解析する必要があります。それらによって病態を分けますと、まずアミノ酸プールが不足するタイプというのが、栄養不足型の病態として考えられます。
 二番日として腎臓、皮膚、腸管の中へ病的にどんどん漏れ出すと、そのために変動が起きるという蛋白漏出型の病態があります。
 三番目に肝臓が主たる合成器官ですので肝細胞の障害が起きると、かなり大きな変動が起こります。
 それから、急性相反応型、遺伝子或いは蛋白合成の調節因子の病的な変動によって、主として肝臓での合成が増えたり減ったりして急性相反応型、炎症型の反応のパターンを示してくる。
 それから、六番目、八番目は主として免疫グロブリンの変化として、多クローン性、単一クローン性そして欠乏症と三つの病的な変化が考えられます。
 その他に、蛋白欠乏症型、ある特定の蛋白質だけが合成されない蛋白欠乏型、Defect Dysproteinemia病態群というのが有ります。
 その他に特殊な場合として、αフェトプロテインが増えたり、リポプロティンが単独に増えたりという病態があるという事はご承知の通りであります。



      講演録に戻る