第1回 特別講演「病態スクリーニング検査としての血清蛋白分画の意義」(16)



16.多クローン性高γグロブリン血症

 免疫グロブリンについては、ここにありますように多クローン性増加、単一クローン性(モノクローナル)或いは単クローン性増加、それから免疫グロブリン欠乏症の三つの病的変化があります。電気泳動で確実にスクリーニングが出来る訳です。
 ただ問題になるのは、非常に小さなM蛋白を見逃がさない為にどういう注意が必要なのか。ただデンシトメータだけに頼るのではなく、濡れたままのセア膜を電気に照らすと意外と見えにくいM蛋白が良く観察されるようになります。目で見るという事は、機械以上に微量のものを見つける事になります。ただγグロブリン分画が低値を示すというのは、IgG免疫グロブリンが欠損或いは著しく低下を示す場合に認められます。IgA、IgMましてやIgEの欠損状態は血清蛋白分画だけでは、云々出来ません。但し成人の場合に、もしもγ分画とβ分画の谷が殆どベースラインまで深く落ち込んでいたら、IgAの欠損を考える事が出来ます。
 この程度しか言えませんので次に必ず免疫電気泳動をやる訳ですが、免疫グロブリン欠乏症については、免疫電気泳動は殆ど無力に近いんで、もしも免疫グロブリン欠乏症を疑う時は、必ず免疫化学的に各クラス別の定量が絶対に必要です。
 多クローン性のγグロブリン増加を来す病態というのは、図のように四つの病態があります。従ってA/G比やZTTなんかは肝機能検査に含まれるというのは、多クローン性高γグロブリン血症が非常に頻度が多いからです。これだけではありません、膠原病、慢性感染症、その他慢性の感作状態のあるような場合にも多クローン性増加が認められるという訳です。



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