| 回答 | - β-γ bridgingとは
- 健常成人ではα2とβとの間の谷とβとγの間の谷がほぼ同じ深さですが、ある病態ではβとγの間の谷の高さが上がっており、βとγに橋をかけたような特徴的なデンシトグラムを示します。これがβ-γ bridgingです。この部分にはIgAおよびIgGの一部が泳動されていますので、IgGととくにIgAが幅広くポリクローナルに増加しているということがわかります(文献1)。
- 肝障害が慢性化するにつれ、γ分画(おもにIgG)の増加傾向が著しくなります。肝細胞で合成されるAlb、α1、α2、βの合成量は減少しますが、測定値としては半減期の短いα2、βとAlbの順で低値を示すようになっていきます(α1分画はかなり重症になっても明らかな低値を示しません)。β分画低値と幅広いγ分画の増加に(とくにIgA)が重なることで、β-γ bridgingが観察されるようになります(文献3)。
- 比較的肝細胞障害の強いものに現れやすく、とくに肝硬変症で多く見られます。なお、アルコール性肝障害の時にはIgAが比較的幅広くなる頻度が高く、βとγの間の谷が浅くなる傾向があります(文献2)。この点の区別が必要となります。
- 検出意義について(文献4)
- 蛋白分画は「肝障害の診断」および「重症度判定」では必須、「経過観察」で準必須の検査とされています。
- 肝疾患の病態分類は「肝細胞の変性・壊死(慢性肝炎、アルコール性肝炎など)」「肝細胞の機能障害(肝硬変など)」「胆汁欝滞」の3つです。β-γbridgingはこのうち肝細胞の機能障害を示します。
- β-γbridgingが観察された場合はかなりの高率で肝硬変症を疑うことができます。また、非代償期でより多く見られる所見とされています。
- 参考 肝硬変の検査(文献5)
- 肝硬変の診断に必要な検査:肝画像診断、肝生検など
- 肝硬変の原因の特定に必要な検査:ウイルス関連マーカー、免疫グロブリン定量など
- 肝硬変の経過観察に必要な検査:肝合成能(Alb、CH-E、T-CHO、PTなど)、肝がんスクリーニング(腫瘍マーカー、超音波検査など)、合併症の検索(食道静脈瘤発見のための内視鏡など)
参考文献
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