【症例へのコメント】
- (司会)普通、血液生化学検査でこのような異常がみられた場合、単に試薬や測定機器の問題として簡単に片付けたり、その原因を追及しないで終わらせてしまうことが多いと思いますが、異常データに前向きに取り組み解析された訳です。特に、個々の測定試薬のpHを全て自分で測定し、さらにタイムコースまで詳細に調べM蛋白の特異的な反応を証明したことは素晴しいことだと思います。
先程のタイムコースの中で、特に血清鉄は第一試薬が入った時点で急に下がっていますが、その点について何かコメントありませんか。
- (フロアから)興味深い症例だと思います。ただ1つ疑問に思ったことは、さまざまな酸に対する反応をみていましたが、クエン酸に対しても患者M蛋白は反応していますね。凝固系の採血にはクエン酸が使用されますが、濁りはまったく認められなかったのでしょうか。また、酢酸とはまったく反応していませんが、直接ビリルビン測定のタイムコースをみてみますと、最初は白濁していて、徐々に濁りが溶解していったようにもみえますが、いかがですか。
- (発表者、質問に答えて)直接凝固の採血管に取ってみた訳ではないので何とも言えませんが今回使用したのは1mol/L溶液で、凝固の採血管は3.8%クエン酸なので約0.3mol/Lですのでだいぶ薄いと思います。で実際に採血してみていませんが濁りは出ていないと思われます。
- (司会)試験管内の実験では酢酸と反応していませんが、37℃あるいは温度を変えることによって白濁もしくはゲル化現象を生じるかもしれませんね。
- (助言者、司会を受けて)鉄の反応はですね、最初は濁っているためにむしろ第一試薬添加で濁度が下がって、それで異常反応を示したことが考えられますけれどもその原因は何かということです。鉄の第一反応のタイムコースをとって異常反応がみられなかったわけですから。
- (司会、助言を受けて)一つの可能性として、第一試薬が入った時点で白濁現象が起こるけれども、37℃加温によって徐々に溶解し透明になったことも考えられるかもしれません。
- (発表者、司会を受けて)実際に試験管で37℃で反応させて、測定させたところを見てなかったので機会があったらもう一度やってみたいと思います。
- (司会)スライドのウエスタンブロッテング分析で、患者IgGがかなり幅広く染色されていますが、これは重合によりIgGが高分子化している可能性も考えられると思います。しかし、これら分子構造的な異常が直接ビリルビン測定の異常反応に結び付いているかどうかはわかりませんから、さらに詳細な解析が必要と思われます。
今回の症例は、たまたま酸に対して反応したわけですが、ある施設から相談された例ではアルカリ緩衝液と反応した例もあります。その例では、γ−GTP値がマイナス値を示し解析を行ってみましたところ、その原因がアルカリ緩衝液と免疫グロブリンが反応したためであることがわかりました。異常反応にはさまざまな原因がありますので、測定値がマイナス値や異常高値を示す場合は、まず電気泳動などを行い、異常免疫グロブリンが存在しないかどうか確認する必要があると思います。
- (質問者) 多くの測定試薬に界面活性剤が添加されていますが、そういったものと反応することはないのでしょうか。また、その場合、第一試薬が入った時に白濁現象が起こり、徐々に白濁が消失してくる可能性はありますか。
- (司会、質問に答えて)界面活性剤との反応は、当然あります。界面活性剤と反応したため異常値を示したという報告は少なくはありません。CRPや免疫グロブリン測定など免疫血清検査で認められますが、そのほとんどはM蛋白が関与しています。その場合も測定値がマイナス値や異常高値を示しますので、電気泳動検査で異常免疫グロブリンが存在しないかどうか確認する必要があると思います。
白濁が徐々に消失することについては、そういう可能性もあるかもしれませんね。この場合、界面活性剤が添加されている試薬と添加されていない試薬で比較検討することで、よりその原因がはっきりするものと思います。
- (フロアから)IgAとIgGのダブルM蛋白の血清でHDL−Cの直接法と沈澱法で埀離を認めました。その原因は、直接法でのタイムコースによりR1で白濁が生じ、R2でその白濁が減少することより測定値が低値を示していたことが判りました。最初はM蛋白全てにこういうことあるのかと思い種々のM蛋白についてやってみたのですがそのM蛋白だけで、他のM蛋白は異常な反応を示さなかったので、M蛋白についてはいろんな干渉作用があり、通常とは異なった反応挙動を示すことがあり、その場合は反応のタイムコースとかについて検索をする必要があると思います。
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