【症例へのコメント】
- (司会)IgA型のM蛋白バンドが3本出現したという症例を報告していただきました。3本のバンドを陽極側からM1、M2、M3と分けたわけですが、M1というのはシアル酸によって修飾されたM蛋白であって、M3はIgA型の重合体のバンドであったということがこの実験からわかったということですね。
- (助言者)M蛋白の推移はどうですか。治療によってM蛋白量は減っているようですが、バンドはどうなりましたか。
- (発表者、質問に答えて)はい。少なくなっております。バンドは退院するまではそのままで、量的には少なくなっていますが、ずっと3本線のままでした。
- (助言者)多発性骨髄腫例で、複数のMバンドが出現するというのは比較的めずらしいのではないか、という点について。必ずしも断定はできませんが、2つ3つM蛋白が出ている場合は良性のM蛋白血症の場合のほうが多いと思いますね。従ってこの症例はバンドが3つもありますから、ひょっとして良性かなと疑うわけです。
ただしこの症例はIgA1で、しかも一つはIgAの重合体であって、もう一つはシアル酸がくっついて移動度が変化していたということになると、元になっているM蛋白は1つであった可能性は高かったと思います。めずらしいかもしれません。
ウエスタンブロッテング分析で半分子IgAと思われるバンドが検出されている点については、推定ですが、実際に半分子があったのではなくて、試料が変性を起こしていたのかもしれない。血中にあったベンスジョーンズ蛋白と思われるバンドは、本当にベンスジョーンズ蛋白かどうかはわからないわけで、変性過程で生じたものではないかな、という感じがしますね。
- (発表者)解析に用いた検体は、1年半ほど前の検体です。
- (助言者)尿を濃縮したものが原点にありますので、これだけだと変性して原点に粘着したものか、本当にモノクローナルなディスクリットバンドなのか、これだとわかりません。免疫電気泳動はないのではっきりわかりませんが、もし半分子IgAだとすると、免疫電気泳動の上でpartial identityの沈降線が見えることがあります。以前発見されたIgAとIgGの半分子は、いずれもpartial identityの沈降線が見えてますし。
もう一つ半分子IgAであるということを証明するには、ゲルろ過法に免疫反応を組み合わせた免疫ゲルろ過法を行うと、よろしいのではないかと思います。更に同じ細胞でwhole moleculeとhalf moleculeのIgAが作られているかということを証明するには、病的な形質細胞の電顕を行ってみるとわかります。我々が経験した症例では、同じ細胞の中に、2つの大きさの違うポリゾームが混在するという大変珍しい症例でした。これがモノクローナルで分子の構造が違うので3つのバンドになっているのか、ということですね。またはベンスジョーンズ蛋白は微量のようですから、もう少し慎重に確認してみないといけないですね。
- (司会)今回、血液細胞学的なレベルでの検索がなされていませんので、免疫グロブリン産性細胞から本当に半分子IgAが産生されているかどうかわかりませんね。ぜひ、この結果を主治医の先生にご報告し興味をもっていただき、細胞学的レベルでの検索ができるよう頑張って下さい。
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