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かけあし!ELP入門


1.ELPとは(3)


 もうひとつ、つぎの言葉も覚えておいてください。


電気浸透 とは

 媒質帯電しているときに、媒質が電場のもとで容器または支持体に対して動く現象4)


 電気泳動で溶液中の粒子は電気泳動によって移動しますが、溶液自体が帯電している場合はその溶液も移動する、ということです。実際の電気泳動による分離は、電気泳動だけでなく、電気浸透の影響も受けるため、単純に「持っている電気力の大きさの順に移動」しないことがあります。


 生徒 支持体ってなんですか

 担当者 電解質液や粒子を支持する(支える)物のことです。

 上のアニメではU字管のなかに溶液を入れ、粒子を浮かべています。これは移動界面電気泳動法といい、分離はたいへんよいのですが、溶液の対流が起こったり大量の試料が必要だったり、不便な点もあります。

 そこで、たとえば溶液に寒天を溶かし込み、固めてみます。
 固まった寒天は「目に見えないくらいの小さな穴がたくさんあいたスポンジ」のような構造をしているため、溶液も粒子もかなり自由に寒天の中を移動することができますが、寒天から流れ出してしまうことはありません。U字管がなくても泳動できますから、応用がきくようになりますし、取り扱いも便利になります。

 ただし、寒天は電気浸透がかなり大きいため、粒子の移動のしかたは寒天がなかったときと同じではありません。ほかにもいろいろな支持体があり、それぞれ性質が違うので、違いをよく知っておく必要があります。

 生徒 電気泳動には、なにか膜のようなものを使うと聞いていますが

 担当者 それは、セルロースアセテート膜(セア膜)という多孔質膜で、支持体の一種です。臨床検査で行う蛋白分画には、もっとも一般的に使われています。


 ここで実際に支持体ゾーン電気泳動法による測定結果についてみてみましょうか。


泳動像


 この図は、血清蛋白を電気泳動し色素で染めたもので、症例検討会第7回の1から引用しました。
 まんなかの白い四角の部分が支持体で、左がセア膜、右がアガロース(精製寒天)膜です。セア膜はもともと白い紙のような膜ですが、アガロース膜はプラスチックフィルムにはりつけてあるほんとうは無色透明の膜です。
 NSが健常人を想定したコントロール血清、PSが患者血清で赤い矢印のところに正体不明のバンドが出ています。

 アガロース膜の黄色矢印のところに、穴があいているのがわかりますか? これは、血清を入れる穴です。膜に電気浸透があるため、端ではなく位置をずらしてあります。
 セア膜は赤い矢印の部分に血清を塗り付けました。セパラックスSPという膜には電気浸透がほとんどないため、血清蛋白はみな同じ方向に泳動されるので膜の端に塗布するのです。そして、それぞれの支持体の右辺に「+」の、左辺に「−」の電極をつけ泳動します。

 どうでしょう、うまくイメージできたでしょうか。


 −もっとくわしく教えてください−

 押してください 支持体にはどんな種類がありますか



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