コントロールサーベイ10年間を回顧して(5)
【データ分析方法(合成主成分による総合評価)】
5−1.目的
血清蛋白分画用電気泳動装置の精度管理には、従来、分画値Alb、α1−G、α2−G、β−G、γ−Gのデータを墓にした
−R、
−δ管理図等が使用されている。また、コントロールサーベイ結果については、各分画値のヒストグラム上における、該当施設の位置付けから精度評価が行われている例が多い。
両方法共に、5種の分画値による表示なので一般になじみ深いという長所がある一方、お互いに強い相関を有するデータが5種もあるため、全体としての精度水準の判断、評価がやりにくく、間題の真の原因をつかみにくくしている欠点も有する。
精度変動因子を統一的に把握するため5分画のデータの他にその相関関係をも含めた主成分による総合的評価指標(合成主成分)を用いた精度管理システムに上記間題点の改良を試みた精度評価を報告する。
5−2.方法
血清蛋白5分画値(Alb、α1−G、…、γ−G)とSD値について、その分画問の相関係数をも含めて3個の主成分を求め、更にそれを1個の主成分に合成した上で、これを精度評価の総含指標(含成主成分)として評価した。
合成主成分の計算のフローチャートを図3に示した。
図4は、各分画値と主成分との関係を3変量(3次元)の場合で示したものである。今回の評価では、5分画値より3個の主成分を求めて使用した。
図5は、3個の主成分の合成をベクトルにて表しており、合成主成分の値はO−P間の距離で表される。

図3 X、SD合成主成分(評価指標)計算フローチャート (拡大図)

図5
5−3.特徴
- 相関データをも含めることにより、精度の高い評価が出来る。
- 1つのデータの変量で評価できるため、装置の善し悪しがわかりやすい。
5−4.評価基準の計算
カタヨリ及び(カタヨリ+バラツキ)の合成主成分は天2分布のパーセント点によって求められる。そこで、それぞれのクラスにおける確率を決め、基準値を決定した。
バラツキの合成主成分は、近似的には正規分布となるので、従来と同じ確率にて各クラスの基準を決定し合格〜不合格評価はカタヨリ+バラツキにて判定した。
また、評価基準を表2のように決めた。
表2 総合評価の基準
| 評価 | 評価内容 |
| カタヨリ+バラツキ | カタヨリ | バラツキ |
| 合格 |  |  |  |
| 不合格 |  |  |  |
5−5.従来法との比較事例
[例1.従来法の評価ランクより悪くなった例]
表3は、ある施設のデータを従来の5分画による評価と、合成主成分による評価を併記したものである。
この評価結果を見ると、従来の5分画による評価ではα1−G、α2−GがA評価、Alb、β−G、γ−GがB評価にもかかわらず、合成主成分による評価は不合格となっている。これは、合成主成分による評価にて間題点の検出精度が上がり、各分画毎の評価よりも悪い評価となっている。
表3 コントロールサーベイ評価結果(
)
| | 分画値 | 合成主成分 |
| Alb | α1 | α2 | β | γ |
 | 貴施設データ | 66.1 | 2.6 | 6.8 | 7.3 | 17.2 | 4.15 |
| 集計データ | 65.0 | 2.5 | 6.9 | 7.6 | 18.1 | |
| 評価 | B | A | A | B | B | 不合格 |
問題点の検出精度が上がる理由について、2変量の場合を図6に示して説明する。(サーベイは、3変量にて評価している。)
この図でX、Y軸上にそれぞれのデータの分布を示してあり、真中の楕円がα1−GとAlbの相関を表している。α1−GとAlbの問には強い負の相関があり右下がりの楕円の分布となる。これは、Albが平均値より大きいサンプルではα1− Gが平均値より小さくなりやすく、本例の様にAlbが平均値より大きいサンプルでα1−Gも大きくなると言うような事はデータに異常があることを示している。その為、各分画でA、Bの評価であっても合成主成分では不合格評価となる。
この様に、各分画問の相関をも含めて評価する事により、従来の方法と比較し、より精度の高い評価になった。
[例2.従来法の評価ランクより良くなった例]
表4は、ある施設のデータを従来の5分画の評価と合成主成分による評価とを併記したものである。
この評価結果を見ると、α1、α2分画でそれぞれD、Cの評価となっているが、合成主成分による評価は合格となっている。これは、評価を行った検体数n=14と少ない為によるものと考えられる。
データの数が少ない場合に評価の精度は低くなり、コントロールサーベイ等検体数の限られた場合には、データが比較的に落ち着いていても異常と判断される事が起こる事がある。
合成主成分を用いることにより各分画間の相関データも含め評価することができ、少ないデータであっても、より精度の高い評価ができる様になった。
表4 コントロールサーベイ評価結果(SD)
| | 分画値 | 合成主成分 |
| Alb | α1 | α2 | β | γ |
| SD | 貴施設データ | 0.75 | 0.21 | 0.30 | 0.30 | 0.31 | 5.33 |
| 集計データ | 0.85 | 0.14 | 0.26 | 0.28 | 0.54 | |
| 評価 | B | D | C | B | B | 合格 |
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