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どう読む?蛋白分画
− データ解析のひけつ −


M蛋白の疑いバンドが出たときの対処法をまとめま〜す! 担当者

[その1]まず、たしかにM蛋白であるかを確認する
  1. M蛋白様バンドでないことを確認する。
  2. 免疫電気泳動、免疫固定法などを実施し、M蛋白の存在と種類を確認する。
  3. 尿の蛋白分画や免疫電気泳動で、BJPの存在を確認する。

[その2]M蛋白の悪性度を確認する
  1. M蛋白の種類
    • 「BJP検出=悪性度が高い」。もちろん、他の種類が良性であるという意味ではない。
    • 「BJPなし≠悪性度が低い」。また、BJPが検出されてもただちに治療が必要でないこともある。
    • IgM型であれば、多発性骨髄腫と原発性マクログロブリン血症の鑑別も必要。
    • 複数のM蛋白バンドが出る場合は、悪性度は高くないと言われている。
  2. M蛋白の量
    • 参考値としてM蛋白量が知りたい場合は、手動でM蛋白の両端にフラクションを入れる分画修正を行い、分画値%と総蛋白量[g/dL]から算出する。
    • 「量が多い=悪性度が高い」ことが多い。
    • 「量が少ない≠悪性度が低い」。BJP型のように血中M蛋白が高くならない場合、非定型骨髄腫のようにM蛋白を伴わない場合もあるため、注意が必要。

[その3]可能であれば、他の検査データをチェックする
  1. M蛋白以外の各分画の蛋白量
    • 総蛋白測定値がわかっていれば、M蛋白を除いた場合の蛋白分画像を算出してみる。
    • ネフローゼ等、基礎疾患や合併症の存在がわかることがある。
  2. M蛋白以外の免疫グロブリンの量
    • 「減少が著しい=悪性度が高い」。
  3. 貧血の有無
    • 多発性骨髄腫:約60%に見られる。
  4. 骨髄像
    • 多発性骨髄腫:異型性形質細胞の増加(通常10%以上)
    • 原発性マクログロブリン血症:低形成でリンパ球様細胞50%以上。
  5. X線または生検による骨破壊像の証明
    • 多発性骨髄腫:約30%に「骨打ち抜き像」。腰痛や骨折が発見のきっかけとなることも多い。また、高カルシウム血症も見られる。
  6. 腎機能障害の有無
    • 多発性骨髄腫:アミロイドーシスによるネフローゼ症候群を伴うことも多い。

[その4]報告する
  1. M蛋白疑いとなった蛋白分画の報告は、無理に分画修正などを加えず「M蛋白疑い」などとコメントを付ける。
    • 分画値%にあまり変動がない場合には見過ごされることがあるため、「いつもと違うパターンである」ということを明示する。
    • M蛋白様分画の出現以外には、全体として蛋白量の変化がない(病態とは直接関係ない)こともあり、その判断をつけやすくする。
    • ピーク名は、コントロールや他の検体と見比べながら確認し、分画報告書にコメントとして記入するとよい。
  2. あえてどこかの分画に分類する必要はない
    • M蛋白は定位置に出現する成分ではない。
    • IgG型はIgGの、IgA型はIgAの、IgM型はIgMの泳動位置に出現することが多いが、IgGは幅広いしIgA、IgMはもともとβとγの境界付近に泳動される。
    • 分子量異常や修飾があれば、まったく違う位置に出現することもある。
    • M蛋白が通常分画の中間にあるためにフラクション位置が動いて困る場合、検査システムが5分画にしか対応していない場合は、マニュアルで適当な位置にフラクションをいれ、分画修正する。
  3. M蛋白をどの分画に含めるか、あるいは6分画等として報告するかは以下のポイントを踏まえて判断する。基準は決めておくとよい。
    • TPは変動しているか
    • Mフラクションが存在しないと仮定した場合にどのような変化があるか
    • 他の検査所見(とくに免疫グロブリン定量値など)はどうか
  4. M蛋白はかならず報告する
    • M蛋白量と悪性度はかならずしも比例しない。
    • これまでは量が少ないものは「老人性」とか「良性」とかいわれ、経過観察のみでよいとされてきた。しかし、数ヶ月で悪性化した多発性骨髄腫症例をはじめ、将来発症する確率が高いという報告もされている。
    • モノクローナルな免疫グロブリンであれば、報告すべき。

 生徒 BJPってなんですか

 担当者 Bence Jones ProteinというM蛋白の一種です。免疫グロブリンの一部分のみがモノクローナルに増殖したものです。分子量が小さいのですぐに尿中に排泄されるので、血液中で確認されることはあまりありません。そのため、尿の蛋白分画や免疫電気泳動で確認するのが望ましいのです。
 なお、BJPと同様の構造を持つポリクローナルな蛋白は健常尿でも見られることがあります。くわしくは、河合先生の特別講演「免疫グロブリン異常症」を読んでね。「5.M蛋白の種類」の後半に説明があります。


 生徒 老人性M蛋白ってなんですか

 担当者 芝先生の講演「高齢者に見出されるM蛋白バンドの解析」によれば、60歳以上ではM蛋白検出率がはっきりと高率になっています。多くは病態とは直接関係ない「本態性M蛋白血症」とされ、これを「老人性M蛋白」と呼ぶことがあります。特別な「M蛋白と老人性M蛋白との区別」の方法があるわけではありません。また、病態と関係ないといっても「良性」であるわけではないことがわかってきています。


 生徒 M蛋白じゃなかったときはどうするんですか

 担当者 M蛋白ではないことを報告しましょう。くわしくは、Q&Aを読んでね。


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